あらすじ
日本有数の大企業・リクディード社のインターン生だった女子大生の松岡まどかはある日突然、内定の取り消しを言い渡される。さらに邪悪な起業スカウトに騙されて、1年以内に時価総額10億円の会社をスタートアップで作れなければ、自身が多額の借金を背負うことに。万策尽きたかに思われたが、リクディード社で彼女の教育役だった三戸部歩が松岡へ協力を申し出る。実は松岡にはAI技術の稀有な才能があり、三戸部はその才覚が業界を変革することに賭けたのだった――たったふたりから幕を開ける、AIスタートアップお仕事小説!
評価
総合評価(読後感) |
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★★★★★ |
90/100(点) |
ストーリー | 文章表現力 | リアリティ | 緊張・切迫感 | 驚き・意外性 |
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★★★★★ | ★★★★ | ★★★ | ★★★★ | ★★★★ |
推しポイント(ネタバレ無し)
- ビジネス書はお腹いっぱいだが、仕事に関わる読み物に触れたい人に◎
- AIについて知りたい気持ちはあるが、小難しくて避けていた人に◎
- 感情豊かな主人公のストーリーに癒やされ、やる気が出る
- 自分もAI使ってみよう、という気になる
懸念点(ネタバレ無し)
- スタートアップ、ビジネス用語がちょっと多い(ググればわかるレベル)
- ある意味凡庸、ある意味特殊設定の主人公なので、共感出来ない人もいる
感想(ネタバレあり)
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ほぼ一気読み!中だるみ無し!
松岡まどかの1年間の激闘をあっという間に読み切った! 文句なしに面白かった。
終盤に三戸部さんが病気で無くなってしまう、という絶望的な状況に陥った後、AIエージェントにデータを学習させてAIミトベが生まれる、という所に胸が熱くなった。
アニメの世界なんかでは結構行われている手法で、例えば2007年に放送された「天元突破グレンラガン」では第2部の宿敵だったロージェノムがシモンに撃破され死亡、その後「ロージェノム・ヘッド」として記憶と知識を元にAIとして再現されていた。
個人向けのAIエージェントはもうすぐ来る未来?
AIエージェント自体は「LangGraph」などを使って実現出来る未来がすぐそこまで来ている模様。
ただ、個人向けのサービスとしてのAIエージェントは、まだ「松岡まどか」が存在していた世界には追いついていないように思える。
経営者・管理職の補助輪としてのAIってアリだな
終章で下記のように、まどかがAIミトベに話しかけている。
「じゃあ...私の雑談に付き合ってください」〜中略〜「経営者は愚痴の一つも社員にこぼせないんです、三戸部さんならわかるでしょう?私は話し相手が欲しくてしょうがありません」
全くその通りで、人によっては友人にも、家族にも仕事の愚痴を話せない、という人もいる。(自分もそう) 別に話せないからと言ってストレスが貯まるわけではない。
ただ、欲求はあるので。利害関係は無く、自分の事をある程度分かっていて、仕事のリテラシーも一定ある人に愚痴りたい、相談したいというポイントが叶うのであれば。それはAIなのかもしれない。
ミツナリ、自分も欲しい。
まとめ
本の有り様としては神田昌典の「成功者の告白」に近いものだと思う。
小説としてだけでも読めるし、ビジネスのノウハウをそこから吸収しようと思えばできるマルチな本。 自分はAIについての知識が全然無かったので「そういう未来もあるんだ」という勉強にもなったし、単純に小説として読んで感動もした。一挙両得。
迷っているなら、買って損は無い。但し「ビジネスとして」「小説の完成度として」の極地を求めてはいけない。どちらもあるけど、少し緩く、ただ文字を追って情景を思い浮かべなら読了すれば、きっと何かを得ていると思う。