読書百席ブログ

読了した本の感想をつらつら記載します。自分用の読書ログが主目的です。

「詐欺師と詐欺師」読了記 │ 刺さった!詐欺バディ物

あらすじ

海外で荒稼ぎして帰国した詐欺師の藍は、ある政治家のパーティーで知り合ったみちるに興味を抱く。みちるは親の仇を捜しており、そのために金がいるという。仇とは、世界的企業に成長した戸賀崎グループ筆頭株主の戸賀崎喜和子。隙だらけの復讐計画を聞いた藍は、みちるに協力することになるが……。 稀代のストーリーテラーが贈る、衝撃のラストにご注意を。

評価

総合評価(読後感)
★★★★★
94/100(点)
ストーリー 文章表現力 リアリティ 緊張・切迫感 驚き・意外性
★★★★★ ★★★★ ★★★★ ★★★★ ★★★★

推しポイント(ネタバレ無し)

  • 「ナオミとカナコ」のようなスリルとハラハラ感
  • 大きな目的が最初から提示されている一本筋のストーリー

懸念点(ネタバレ無し)

  • 一部分だけオカルトあり。結構話の本筋に関わるところ
  • (自分としては良い"味"になってるので全く問題ないが)

感想(ネタバレあり)

※自分としてはかなりオススメ本なので、出来れば読んで欲しい。「絶対読まない」と決めている人や、読了済の人がどうぞ。。。

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今年一番の当たり!

良かった!クライムノベル好きとして、読んで価値ある一冊だった!

少ない登場人物による濃度の高い群像劇

重要な登場人物は下記のみ。後は政治家の松浦とか、セクハラタクシー運転手とかがいるけど彼らはスパイス程度。 5人が複雑に、深く、濃く絡み合う。

登場人物

  • 藍(主人公1 キレる頭脳の持ち主。過去のいきさつから、みちるに肩入れしてしまう)
  • みちる(主人公2 幼い・拙い。戸賀崎喜和子に復讐するために生きてる)
  • 戸賀崎喜和子(大企業の実質的支配者。みちるは、喜和子がみちるの両親を殺したと思っている)
  • 秋重(探偵 実は元?医者。喜和子に妻の命を握られている)
  • 芳江(喜和子の家政婦)

「実は●●が犯人だった!」「考えもつかないトリックが!」みたいなどんでん返しは無い。 が、この本にはもっとドロドロとした「真相」があり、明かされる度に人間の本質的な、醜い一面を見せられて軽く吐きそうになる。

主な吐きそうポイント

  • みちるの両親はクズ。横領した挙げ句、口封じのために喜和子の夫と娘を殺害している
  • みちるの両親は実は生きていた(喜和子が復讐のために飼っていて、いたぶっている)
  • 喜和子とみちるが雪解けどころか、二人共本心から望んで親子になろうとしている(縁組で)
  • こんな話なのに、主人公たちの名前が藍(愛)、みちる(満ちる)という命名した作者

ちょっとした救いは、ラストでみちるが「黒い輪郭が見えたということは、両親はクズだった。確信した。」と気づいたことか。 これによって藍がこの先の人生まで縛られ続けることは無い、かもしれない。。。

ハッピーエンドの欠片もない。それでも生きていく

それが良い。リアリティは無い話なんだけど、それがリアルだという気がする。

バッドエンドだとも思わないし、行き詰まっている感じもしない。ただ、しがらみがそこにあるだけ。。。